DNA鑑定の費用や手順は?専門家に聞く「DNA鑑定の基礎知識」

ニュースやドラマなどで「DNA鑑定」という言葉を耳にしたことがある人は多いでしょう。最近では、ベルギーの前国王に対し、隠し子だと主張する女性が現れ、前国王がDNA鑑定に応じるという騒動がありました。日本ではこうしたDNA鑑定が、どのように行われているのか、費用はいくらかかるのか、弁護士法人一新総合法律事務所の橘里香弁護士に聞いてみました。
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1:DNA鑑定の費用や方法を知っておこう

そもそもDNA鑑定とは、細胞内のDNAの配列を調べることによって、親子(父子)関係があるのかどうかの判定を行ったり、刑事事件の捜査で犯人の特定を行ったりするものです。この記事では、前者、つまり父子関係を判定するためのDNA鑑定について解説します。

例えば、世間には女性を妊娠させておきながら「俺の子じゃない」などと白を切ろうとする不届き者も。DNA鑑定は、そういう男性に責任を負わせる切り札となりえるのです。いざというときのために、DNA鑑定の費用や方法について知っておきましょう。

 

2:DNA鑑定の費用や方法は?DNA鑑定の基礎知識

(1)DNA鑑定には2種類がある…それぞれの費用は?

まず、DNA鑑定は大きく分けると2種類あります。血縁関係があるのか、個人的に確認するために行う“私的鑑定”と、裁判所など公的機関に証拠として提出するために行う“公的・法的鑑定”です。

このうち私的鑑定は、一般向けにDNA鑑定を行っている会社や研究機関に申し込むことで誰でも行うことができ、簡易のものであれば費用はおよそ3万円から。

他方、公的・法的鑑定は、裁判所などを介して厳重に行われるため、最低でも約8万円前後の費用がかかります。

(2)DNA鑑定の方法…私的鑑定の場合は?

DNA鑑定会社に依頼をすると、会社から検査キットが送られてきます。父子関係を確認したい男性と子ども、それぞれの頬の内側の粘膜をスプーン状のもので拭うことで検体を採取し、その検体を郵送して専門家に鑑定してもらうのが一般的な方法です。

(3)DNA鑑定の方法…公的・法的鑑定の場合は?

公的・法的鑑定でも、頬の内側の粘膜を検体にする方法が広く用いられています。ただし、私的鑑定が郵送のみで簡単にできるのに対し、公的・法的鑑定は、検体の採取に鑑定会社の社員が立ち会うなど、より厳重に行なわれるという違いがあります。

 

3:DNA鑑定に関する素朴な疑問6つ

ここまでDNA鑑定の基礎知識をお届けしましたが、「えっ、私が思っていたイメージと何か違う!」「なんとなくわかったけど、いざ自分が実際に当事者になったら、どうしよう」などと思った人も多いことでしょう。

そこで、DNA鑑定についての素朴な疑問に、弁護士法人一新総合法律事務所の橘里香弁護士に答えていただきました。

(1)DNA鑑定は病院で行えないの?

DNA鑑定は、専門の会社や研究機関が行っているとのことですが、産婦人科など病院ではやっていないのでしょうか?

橘里香弁護士:「日本全国の病院をしらみつぶしに調べたわけではないので、“やっていない”と断言することはできませんが、多くの病院では、DNA鑑定は行っていないと思います」

(2)DNA鑑定って妊娠中でもできるの?

DNA鑑定は、父と子の両方から検体を採取するとのことですが、まだ子どもが生まれていない妊娠中にはできないのでしょうか?

橘里香弁護士:「近年、妊娠中の女性の血液からDNA鑑定を行うという方法が可能となりました。かつては妊娠中の鑑定では、羊水の採取が必要でしたので、それにくらべると母体への負担が少なくて済みます。

ただ、妊娠中の母体血液での鑑定で、裁判所が十分と判断するかは、まだかわらない部分もあり、今後の判例の蓄積を待つ必要があると思われます。

もちろん、妊娠中の女性の中には、経済的に不安があり、なるべく早いうちから養育費の確約をとっておきたいという事情を抱えているかたもいらっしゃるかと思います。

ですが、そもそも養育費を請求するには、子どもが生まれていることが大前提です。

養育費は、出産後、速やかに認知調停などを申し立てれば、認知が認められた際に、過去の分もさかのぼって請求することもできます。なので現時点では、DNA鑑定は妊娠中に無理に行うよりも、お子さんが生まれてからのほうがよいと思います」

妊娠中にDNA鑑定を行うことは、技術的には不可能ではありません。ただ、お腹の中の子の父親が誰か鑑定でつきとめたとしても、裁判上の手続きにおいて、再度の鑑定が必要となる可能性もあります。妊娠中にわざわざDNA鑑定を行う実益は乏しいようです。

(3)私的鑑定を行う場合、業者はどうやって選べばいい?

費用だけ見ると、私的鑑定のほうがお得のように見えますが、私的鑑定を行うにあたり、注意点はあるのでしょうか?

橘里香弁護士:「まず、私的鑑定をどの会社・研究機関に申し込むのかという問題があります。インターネットで検索すると、たくさんの会社・研究機関がありますが、そのすべてが必ずしも信用ができるとは限りません。

検査費用にもかなり幅がありますが、あまりにも安いところでは、検査のやり方がずさんだったり……というような話も耳にします。

私的鑑定を申し込む場合は、その会社・研究機関が本当に信用できるかどうかを、慎重に判断する必要があるでしょう。その会社・研究機関が、裁判所と取引実績があるのかどうか、弁護士協同組合の特約店であるかどうかというのは、その判断のひとつの目安になるかと思います」

会社・研究機関のホームページをチェックすれば、そこが信用できるところなのかある程度は判断できます。しかし、よくわからない場合、ひとりで問題を抱え込まず、弁護士に相談しましょう。

(4)私的鑑定の結果は絶対じゃない!?

お手軽で費用も抑えられる私的鑑定ですが、もうひとつ落とし穴が……。

橘里香弁護士:「私的鑑定はあくまで個人的に確認するだけのものですから、検体採取過程の信用性が低いという問題があります。

また、私的鑑定において、ある男性と子どもの間に父子関係があるという結果が出ても、その後の認知の裁判では、私的鑑定の結果では、証拠として認められません。なので、裁判となれば、公的・法的鑑定をやり直す必要が出てくるおそれはあるでしょう」

(5)DNA鑑定は髪の毛でもできる?またその費用は…

DAN鑑定は、頬の内側の粘膜を検体とするのが一般的とのことですが、髪の毛では行えないのでしょうか?

橘里香弁護士:「頭髪や毛根などでDNA鑑定を行う方法もあります。ただ、頭髪での鑑定は、頬の内側の粘膜での鑑定よりも技術的に難しく、毛根からの細胞採取も鑑定に必要となる十分な細胞が採取できない場合もあり、また費用も高額になるなどのデメリットがあるようです。

このほか、血液採取による鑑定もあります。ただ、頬の内側の粘膜を検体にする方法が、体への負担も少ないので、この方法が父子関係を確認するためのDNA鑑定においては一般的です」

フィクションの世界では、DNA鑑定のために男性の髪の毛をこっそりカットして……なんて展開もありますが、現実的な方法ではないのですね。

(6)男性がDNA鑑定を断固として拒否する場合は?

父親であるはずの男性が、あくまで「俺の子じゃない」と言い張り、しかも、DNA鑑定にも協力してくれない場合、どうなるのでしょうか?

橘里香弁護士:「当事者の話し合いで解決しなければ、認知を求めて調停や裁判を起こすことになります。しかし、非協力的な男性から無理やり検体を採取することはできません。DNAの公的・法的鑑定は、当事者の合意のもと行われるものです。

ですから、男性がDNA鑑定に協力してくれなければ、鑑定以外の証拠から親子関係を立証していくしかありません。例えば、肉体関係があった当時や妊娠が発覚したときのメールやLINEでのやりとりなどが証拠となりえます。

また、男性が正当な理由なくDNA鑑定を頑として拒む場合、その経緯や態度次第では、裁判所が“やましいからこそ拒むのではないか”という心証を抱いて、父子関係があるという判断に傾く可能性は十分あるでしょう」

DNA鑑定による決定的な証拠がなくても、言い逃れできないようになっているのですね。ちょっと安心しました。

 

4:まとめ

今回は、DNA鑑定の費用や方法について解説しました。男性の中には、パートナーの妊娠や出産をきっかけに態度を豹変させるようなクズ男も存在します。

万が一、そのようなケースに遭遇した際に、自分自身や子どもを守れるように、これらの知識をぜひ押さえておきましょう。

 

【取材協力】

橘里香 弁護士・・・弁護士法人一新総合法律事務所所属の弁護士。沖縄県那覇市出身。1979年生まれ。メンタルケア心理士の資格を持ち、「相談しやすさ」「話しやすさ」に定評がある。離婚事件に注力し、これまで数多くの事件を解決に導いている。